獣医ウイルス系論文紹介

獣医の役に立つこともたまには書かないとと思って、自分の専門を活かした論文紹介をすることにしてみました。

Identification of a previously undescribed divergent virus from the Flaviviridae family in an outbreak of equine serum hepatitis.
Chandriani S, Skewes-Cox P, Zhong W, Ganem DE, Divers TJ, Van Blaricum AJ, Tennant BC, Kistler AL.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Mar 18. [Epub ahead of print]
PMID: 23509292 [PubMed - as supplied by publisher]

今日はTheiler’s diseaseというウマの病気とウイルスについて。どうやら病原因子となる候補ウイルスが発見された様子です。Theiler’s disease多分日本語にするとタイラー病で、獣医s ビー アンビシャスというブログに日本語での詳しい説明が載っていました。
http://blog.goo.ne.jp/rowdy_pony/e/f6fe0eea5715c257088ff6e6741762ff
論文の情報と合わせると、タイラー病とはウマの肝炎で、病原体や毒素に対する抗血清などを注射した後に時折見られる疾患とのことです。この過程がヒトのB型およびC型肝炎と類似しているとのことから、元々ウイルス性疾患ではないかと疑われていたらしいです。
今回は、Theiler’s diseaseのアウトブレイクがあった集団で、deep sequencingで候補となるウイルスを同定し、さらに定量PCRなどで血清中のウイルス量を調べています。まぁ最近の流行に乗っ取った攻め方だと思います。
同定されたウイルスはFlaviviridae(フラビウイルス科)に属するウイルスですが、既知のウイルスとは遺伝的にかなり遠いようです。

本研究から、このウイルスがTheiler’s diseaseの一因である可能性がかなり高いと思うのですが、まだ原因ウイルスというのは少し早いかと思います。続報求む。

それにしても、動物の新しいウイルスが次々と同定されていきますね。一方で、疾病との関係は疫学データなども用い、慎重に検討する必要がありそうですね。

獣医の役に立つためにも、論文紹介頑張ります。